クラフトマンシップが導く新たな地平

ニック・フィディアン・グリーン × ラリック
限定アートピース《スティル ウォーター》

製品を見る



静寂が冴えわたる瞬間

産業革命の波が押し寄せる時代に、自然へのインスピレーションを求めたルネ・ラリック。彼はやがてジュエラーとしてそのキャリアをスタートし、一世を風靡します。今日、馬の描写に長けたイギリス人アーティスト ニック・フィディアン・グリーンは、この自然への愛をラリックと共有しています。新しいテクノロジーがあふれるデジタル社会においても、彼はラリックのように昔ながらの技法を用いて作品を制作しています。すべてが加速する時代に、《スティル ウォーター》は静けさの貴重なイメージを提供します。

ニック・フィディアン・グリーンの彫刻は都市の中心部はもとより、英国王室が主催するロイヤルアスコットやフランスのドーヴィル競馬場まで、世界中のさまざまな場所に設置され、個人のコレクターをも魅了しています。また、2011年にハイド パークのマーブル アーチに設置された、高さ33フィートに達する同氏の代表作《スティル ウォーター》は、今やロンドン市民に愛されるランドマークとなっています。同氏のイリュージョニストのようなジェスチャーは、この動物が鼻先で水面に接し平衡を保つ繊細なバランスを捉えています。その存在感は力強くありながら、その姿勢は儚く無力です。

「馬は危険を感じ取ると決して水を飲みません。完全に安全だと感じる必要があるのです」と、ニック・フィディアン・グリーンは語ります。



一目見た時から

1983年に20歳を迎え、チェルシー美術学校の生徒だったニック・フィディアン・グリーンは、大英博物館の「セレネの馬」として知られる像に啓示を受けます。それはギリシャのパルテノン神殿にあった2500年前の大理石の至宝で、19世紀にエルギン卿がロンドンに持ち帰ったものでした。「私は、この大理石の彫像の美しさ、調和、バランス、プロポーションに完全に釘付けになりました。まるで神の手で彫られたかのようだと評した人もいます」と、彼は約40年前に大きな衝撃を受けた出会いを振り返ります。そしてこの馬頭は、今でも彼にインスピレーションを与え続けています。

彼は1990年代初頭に妻と子供たちを連れて定住したサリー州の田園地帯を一望できる静かなスタジオで、この高貴な動物を1日数時間にわたり彫刻しています。そのスケールは模型程度のものから巨大なものまで拡がり、モチーフの力強さと威厳を表現しようと努めています。「馬頭はこれまで私の感情と表現の媒体となってきました。言葉を伝えるチャンネルの役割を果たし、力、気高さ、もろさ、優しさ、優美さ、静けさなどの思想を表現しています。私は常に断片に魅了されていました。それは、今もまだ存在している過去の何かです」と彼は語ります。








ブロンズからクリスタルへ

⽐類のない素描家であり彫刻家でもあるニック・フィディアン・グリーンは、写実的な⾺の彫刻を専⾨としています。彼は挑戦的なロストワックス技術に習熟し、サリー州のスタジオでは⽯膏型を、⾃⾝の鋳造所ではモニュメンタルな作品を制作しています。また近年では、ブロンズだけでなく様々な素材のパレットを使って実験を⾏っています。そのような彼にとって、クリスタルガラスはまさしく初めての素材です。

「30年にわたってブロンズを中心に考えた後、最近では大理石や半貴石の彫刻も手がけています。そのためクリスタルを扱うのは自然で刺激的な前進です。基本的に私は地球がもたらす素材を扱うことが大好きなのです」と彼は説明します。




命を吹き込むラリックの革新技術

この限定エディションには、ラリックがアーティストと協力し特別に開発したスチール性の鋳型が使用されています。1000℃以上に加熱された素材を型に注入するためには、長年の経験と高度に訓練された技術を要します。熟練の職⼈による数々のプロセスを経て、ようやく⾺頭に命が宿ります。


色彩の力

この彫刻の色彩は、クリアのみならずブラックからアンバーまで示されます。ニック・フィディアン・グリーンは緑青に精通しており、普段から自身のひとつひとつの作品に細心の注意を払っています。しかし《スティル ウォーター》の場合、彼は色を付ける工程をラリックに委ねました。作品は異なる光の中でその姿を現しています。




ニック・フィディアン・グリーン氏によるコメント

「ラリックのスペシャリストたちの細部へのこだわりは並外れたものでした。ロストワックス技術による作品の表面や仕上げに対して、実現可能な効果や彼らの経験は、私の作品をクリスタルへ移行するにあたり非常に重要でした。私は常々、彫刻は多くの感覚を満足させると感じてきました。その触覚的な性質は、私にとっても、作品にとっても大切なものでした」

「表面での光の反応の仕方だけでなく、形の中にまで光が入り込む様子に魅了されています。それは私にとって、初めての経験です。また、この新しい媒体で作業するための課題も楽しんでいます。特に、クリスタルでは彫刻の輪郭が柔らかくなり、その結果、形がより流動的になるという点です。また、たくさんの様々な色を試してみることも刺激的です。クリスタルのそれぞれの色の強さ、深さ、透明度によって、スティル ウォーターはまったく異なる存在感を持つようになると感じています」




Nic Fiddian Green ニック・フィディアン・グリーン

1963年生まれ。イギリス、ハンプシャー州で育つ。セント マーチン スクール オブ アートでロストワックス鋳造の学位を取得。定期的にエキシビションを行い馬頭の彫刻で世界的に知られる。その作品はイギリス、オーストラリア、フランス、香港、イタリア、アメリカのパブリックスペースや私的コレクションで観ることができる。彫刻作品を専門に扱うロンドンのスラドモアギャラリーで20年にわたり紹介、展示されている。